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ロボットカフェが大阪に開店 [科学コミュニケーション]

 瀬名秀明さんの秘書の方のブログで知ったのだが、「ロボカフェ」なるものがオープンしたという。
 詳細はここの報告や、読売のニュース(動画)で見ることができる。
 AIBOをはじめとするさまざまなロボットが店内に置かれており、お客さんが手にとって遊べるというから嬉しい。さらに、ロボット関係の書籍も置いてあるという。
 ロボットは科学技術の産物であるが、文化的、社会的意義についてさまざまに議論されているように思える。ロボットを題材にした小説やコミック、映画も多い。まさに(現物はともかくとして、概念としては)十分に文化として定着している科学技術であるといえる。そして今ようやくビジネスとして現実味を帯びてきたともいえるだろう。だからどうしても、現物のロボットに親しむというのがカフェの目的になるのは仕方がない。
 だが一歩進んで、このカフェでロボット工学についての話をしてみたり、人工知能について考えてみたり、ロボットの人権について考えてみたり、ロボットと戦争について議論してみたり・・・・というような展開ができないだろうか。ロボットに親しむというだけのカフェにしてしまってはもったいない気がするのだ。ここでの一般の人の意見や願いが研究者・技術者に届くことにより、社会に根ざしたテクノロジーとしてロボットが発展していく可能性もあるだろう。
 僕は、社会がサイエンスやテクノロジーを育てていく、その一つの手段として、サイエンスカフェが位置づけられると考えている。ロボカフェにもその可能性が十分あると思っている。期待したい。


東工大でサイエンスコミュニケーションの授業 [科学コミュニケーション]

 科学と社会をつなぐ「サイエンスコミュニケーション」に関心が集まっている。東京工業大学でも、11月から「科学技術コミュニケーション論」が開講される。シラバスによると、「科学者としての地歩を固めつつある博士課程後期の学生」を対象にしており、アウトリーチを中心に実践的な演習を行うようだ。さらに、「数週間、新聞社等のメディアで仕事を体験するメディアインターンシップ」も用意しているというから本格的だ。メディアインターンシップは、科学者を目指す人にとっても、メディアリテラシーを身につけるよい機会となるだろう。研究者とメディアの齟齬がしばしば問題になるが、それはメディアが一方的に努力して解決できるものではないはずだ。インターンシップを通して、お互いの立場を理解して初めて、次の一歩を踏み出せると思う。

 こうしてみると、さまざまな大学で開講されているサイエンスコミュニケーションの授業には、
1)サイエンスコミュニケーターの養成を目指すもの
2)科学者を目指す人にコミュニケーションスキルを身につけさせるもの
の2種類がある。どちらも試行錯誤の段階だが、科学と社会のよりよい関係に向けて、一歩ずつ進み始めたようだ。


サイエンストンネルで異分野交流会を! [科学コミュニケーション]

 日曜日のことになるが、科学コミュニケーションに興味を持っている仲間たちと、日本科学未来館へ行ってきた。
 集まった、ばんこ、のんちゃん、隊員、えったん、たくろー、僕の6人で、サイエンストンネル展を見た。サイエンストンネルは、独マックスプランク研究所による企画展である。入り口の素粒子の世界から始まり、だんだんスケールアップしていって、最後は宇宙で終わるという流れになっている。研究の生データが展示してあることもあり、少々難しめの印象だ。しかも、説明書きは一般的な研究の紹介で、データの示すものの解説がないのが残念だった。これは科学をやっているひとの性かもしれないが、この蛍光ラベルしてあるタンパクはいったい何? とか、横軸の示すのは何? とかが、どうしても気になってしまう。

 でも、ここで面白い発見があった。のんちゃんの言葉を借りると、みんなの「興奮ポイント」が、サイエンストンネルを進むうちに分かるのだ。「興奮ポイント」とは、サイエンスの中で興味を持っていて、おもわず興奮してしまう分野、領域のことだ。要するに、いま自分のやっている研究分野といってもよいだろう。
 僕の場合は、2つ目のトンネル、ナノの世界だ。新しい分子を作って、新しい物性を見出すというのは、僕のやっていることにも通じて、ついついみんなに解説してしまった。のんちゃんの場合も、やってる研究ととっても近い展示があり、少し話をしてもらった。
 このように、わいわいがやがや進むうちに、それぞれの興味が分かってきた。みんなの研究が、サイエンストンネルの中のどこに位置するかが見えてきて、そして、サイエンスとしてどういう位置づけなのかが、漠然とだが見えてきた気がしたのだ。

 理系の研究者、大学院生のみなさん! もうすぐ終わっちゃいますが、ぜひともサイエンストンネルに行ってみてはどうでしょう? できればいろんな分野の友達を誘ってみてはどうでしょうか? お互いの分野が、そしてサイエンスの全体が見えてくるかもしれません。
 サイエンストンネルに集まって、異分野交流会をするなんてのも良いですよね。科学館は、科学者どうしのコミュニケーションの場になると思いますよ。


地域と科学をつなぐ居酒屋:アストロノミーパブ開店! [科学コミュニケーション]

 風の噂で聞いてはいたが、ついに「天文居酒屋」が始まるという。研究者が街中に出て市民と科学について語り合う、「サイエンスカフェ」が注目を集めている中での営業開始だ。国立天文台と三鷹市が連携して、月に1回開催するという。
 サイエンスカフェの議論をしていると、必ず「日本にはカフェ文化がないだろう」とか「対象は誰なのか」という話になる。僕は、サイエンスカフェはコンセプトであって、別にカフェにこだわる必要はないし、対象もさまざまでいいと思っている。むしろ、いろんなサイエンスカフェがあちこちに開かれたほうがいいと思うのだ。
 そこで、三鷹で開店する天文居酒屋「アストロノミーパブ」について考えてみたい。関係者や参加した人がいたら、トラックバックやコメントをお願いしますね。

 サイエンスカフェの活動の一つの可能性として、科学と地域をつなぐ役割があると思う。今までも、
大学や研究所は一般公開を通じて、地域と交流する機会を設けてきてはいた。しかし、それも年に1回や2回のこと。一般の人からすると、敷居の高いところもあったかもしれない。そこで、研究者が地域に出て、「こんなことやってますよ~」と気楽に話す機会があるといいと思うのだ。
 研究者だって、地域に生活する人だ。周りの店に食事にも行くし、お酒だって飲む。だったら、そこで他の人と交流する機会をセッティングしてみてはどうだろうか。
 国立天文台は今までもアウトリーチに熱心だった。また「天文台」だからからか、地域にとっても身近なところでもある。だからこそ、地域と天文学をつなぐ架け橋としてアストロノミーパブに期待したい。一つだけ残念なのは、事前に応募しなければならないということ。これは三鷹市の「三鷹ネットワーク大学」の一環だから仕方がないことなのだが、やはりふらりと立ち寄れる居酒屋がよい。
 アストロノミーパブでは、近くの蕎麦屋が「銀河団いなり」「隕石(いんせき)唐揚げ」などの特別メニューを提供するという。それならばその蕎麦屋で、月に1回天文デーを設けてはどうだろうか。天文台の研究者も客としていくし、学生はバイトしたりして。家庭用プラネタリウムのホームスターを上映したり。外では望遠鏡で星を見る。望遠鏡をのぞいていった人に「隕石唐揚げ」を売ったっていい。天プラの人が天ぷら売ったり(シャレです、天プラの人、気を悪くしないでくださいね)。七種類の天ぷら盛り合わせ「北斗七星」とか。
 話がずれた。もう一つ言いたいのは、このようなサイエンスカフェやサイエンス居酒屋は、 「知」を地域に還元する場でもあるだけでなく、地域が科学を育てる場にもなりうるということだ。市民と科学者の交流から新しい科学が生まれてくることはないだろうか。また科学者のタマゴである学生が、市民と触れ合うことによって、地域が科学者を育ててゆく可能性はないだろうか。アウトリーチという「科学→社会」の方向だけでなく、「社会→科学」の向きのコミュニケーションができる場だと期待している。

(追記)CoSTEPのサイエンスカフェ@札幌は地域密着型の催しだ。地域が科学を育てるんだ、という視点で今後のカフェをデザインすることはできませんかね? 遠く東京から期待してますよ。
 

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科学を音楽にする [科学コミュニケーション]

 CoSTEP受講生のヤギさんが、音楽と科学について書いている。コメントでK_Tachibanaさんが、アミノ酸の配列を音階に対応させて音楽にする話を紹介していた。

科学と音楽の融合といったとき、
・科学を音楽にする
・音楽を科学する
の両方(それ以外も?)が考えられる。アミノ酸やDNAの配列からインスパイアされたというのは前者に当たるだろう。そこで、「科学を音楽にした」例を思いつく限り紹介してみたい。



 同じような発想で、数学を音楽にしてしまった人がいる。京都大学理学部数学科の加藤和也教授が、その人だ。いくら音楽といっても、美空ひばりとは何の関係もない。加藤教授はもともと一風変わった言動で、その業界では非常に有名だ。
 加藤先生の話を聞いたのはもう何年も前だからよく覚えていないのだが、素数を並べるとメロディーが生まれるのだと真面目な顔で主張していた。おそらく7で割った余りかなんかで音階を対応させていたのだと思う。だからなんだという気もするが、本人は本気で「素数のメロディーが聞こえる」と言っているのだからすごい。
 その加藤先生、初回の授業では「素数の歌」を歌うのだという。「素数の歌はとんからり」という何が言いたいんだか分からない歌だが、加藤先生の素数に対する思いが詰まっている歌である。数年前に朝日賞を受賞した際の朝日新聞の記事でも、研究内容である整数論よりも「素数の歌」のほうが紹介されていたくらいだ。

 このように、数学やサイエンスの内容を歌にするという例はいくつかある。この分野で有名なのは、歌う生物学者・本川達夫東工大教授だろう。生物学の内容を歌にして親しみやすくしたのだ。CDデビューもしているからすごい。生き物は円柱形♪からはじまって、アドレナリンりんりん♪やらなんやら、非常に愉快な人である。テレビ朝日系列の音楽番組「題名のない音楽会」でもその歌声を披露していた。ここで聞くことができる。

 逆に音楽家が科学することで有名なのが、サックス奏者の坂田明さんだ。水産学科出身の坂田さんは、音楽家となった今も趣味でミジンコの研究をしており、日本プランクトン学会から表彰されてもいる。今までに結成したグループの名前も、「細胞分裂」「MITOCHONDRIA」「微塵子空艇楽団」などとユニークだ。「ミジンコ 静かなる宇宙」というDVDも発売される。ミジンコの映像に、坂田さんの音楽が重なる素敵なDVDだ。

 ついでに思い出したが、嘉門達夫の「生物・漢字フラメンコ」(2ndアルバム『日常~COM'ON 超B級娯楽音楽』)という歌も面白い。ちょっと聞くとスペイン語で歌っているようだが、実際は「ミトコンドリア」などの生物用語を連呼しているだけなのだ。まさに嘉門達夫ならではのアイディアだ。

 こうみてみると、音楽と科学の融合といってもいろいろあることが分かる。
 科学も音楽と同じように、人の心を豊かにする。その思いを分かち合えたら良いなあと思う。


ブログでつながるサイエンスコミュニケーションの輪 [科学コミュニケーション]

 今日は風邪で寝ていた。ひさびさにゆっくりと休んだ一日だった。夕方からすこし調子がよくなったので、昨日生協で衝動買いした「ブログ・ジャーナリズム」をぱらぱらと読んでいた。著者の方々のブログは以前から時々読んでいたので、ついつい手が伸びてしまったのだ。
 たしかにブログというメディアにはたくさんの可能性が詰まっていると思う。だがそれがジャーナリズムになるのか、僕にはよく分からない。ジャーナリズムとしての信頼性を考えたとき、新聞だからテレビだからといって無条件に信用してしまう時代は終わりつつあるだろう。一方で、人気ブロガーの方々が支持されているのは、後ろにある権威ではなく、ブログの内容そのものが評価されているからだと思う。所属や実名といったものを担保としなくても、内容が信頼を生んでいるのだろう。
 僕がブログを始めたのは今年の1月1日である。もともと、とある日記サイトで雑感を記してはいたので、その延長だった。日記サイトで書いていたころは、見ているのは友達だけだったので、実際に会って話せるので、掲示板も設置する気はなかったのだ。ブログに移ってきてからも、日記の延長としか思っていなかった。
 そんな僕も、ブログを続けているうちに、その可能性を身をもって感じるようになってきた。そのきっかけは、4月か5月だ。サイエンスカフェについて書くと、急に閲覧数が上がることに気づいたのだ。そして科学技術コミュニケーター養成の情報を書くと、またもや閲覧数が増える。読者を意識した瞬間だった。そこからは、東大のインタープリター養成コースなど、なかなか情報が出なかったから、説明会などの情報を積極的に載せるようにした。僕はただの学生だけれど、情報の担い手になれると実感したからだ。現に、僕のブログで情報収集してくれた人もいたようで、発信することの重みも同時に感じるようになった。
 そして今。ブログを通じてサイエンスコミュニケーションの輪が、どんどんと広がっている。その核となっているのは、人気ブロガーとして「ブログ・ジャーナリズム」の本でも紹介されている、5号館のつぶやきおやじさんだ。5号館のつぶやきおやじさんは、北大の科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)の講師の一人でもある。集まれCoSTEPとの呼びかけに、次々と受講生からのトラックバックが集まっている。講義の記録を丁寧に残しているブログもあれば、議論が始まっているブログもある。全部見てみると、北大のユニットの躍動感が伝わってくる。「顔」が見えるといってもいいかもしれない。授業でもブログについて取り上げるそうだ。
 東大の科学技術インタープリター養成プログラムでも、講師の瀬名秀明さんがブログを立ち上げた。そして受講生は授業の報告や感想を、それぞれのブログで書いてトラックバックすることになっている。 これは課題ということもあり、真面目なものが多いかもしれない。
 北大のユニットの講師のNambaさんも書いていらっしゃったが、ソーシャル・ネットワーキング・サイト「mixi」の「コミュニティー」でも議論が活発になっている。
 今はまだ、サイエンスコミュニケーション業界と学生の中だけのコミュニケーションの段階だが、ここからどう科学と社会のコミュニケーションにつながっていくのか、とっても楽しみだ。

(追記)
そういえば、以前どこかのコメントかなんかに書いたのだが、「理系白書ブログ」は、一つの見本になるような気がする。元村さんがいなくても、お客さんどうしで話が盛り上がるところなんて特にすばらしい。理想のサイエンスカフェのようだなぁ。

(追記2)
よく考えたら、僕もインタープリター養成プログラムの受講生なわけで、早いとこ講義の報告と感想をブログに書かないといけないわけで。はじめは別ブログにしようかとも思ったが、やはり読んでくれる人がいたほうが良いから、ここで書くことにしようかとも思うわけで。


いよいよブレイク!サイエンスカフェ [科学コミュニケーション]

 今年に入ってから、さまざまな団体がサイエンスカフェを実施するようになってきました。K_Tachibanaさんが、ブログでまとめてくださっています。僕も、科学イベントウォッチャー(?)としてサイエンスカフェの動向には注目してきました(#1)。さらには、自分たちでサイエンスカフェも実施してしまったというくらいです。というわけで、せっかく注目が集まってきた時期なので簡単にまとめておきたいと思います。知っている範囲でもサイエンスカフェの研究をしている人がいますし、気になる人はコメントお願いしますね。

 もともと、サイエンスカフェはイギリスで始まりました。Cafe Scientifiqueと題し、1998年に始まって以来、科学者と市民が対話する場所として世界各国に広まったようです。日本には、産総研(当時)の小林信一先生たちによって紹介されたのが最初ではないでしょうか。ウェブから詳細な報告書(pdf)が手に入るので、興味のある方は読んでみることをお勧めします。
 このサイエンスカフェですが、日本でも今年に入ってから次々と開催されるようになってきました。僕自身もNPOの仲間と、5月末の大学祭で開催しました。カフェの企画を提案した2月の段階では、他であまり実施している様子がなかったので、日本初に近いかなと思って意気込んだものでした。
 今までも科学館などではカフェのようなイベントもあったようです。しかし最近のサイエンスカフェでは、場所も街のカフェだったり、主催者もNPOや大学だったりと、かなり多様化してきています。
 ここで、今までに実施されたサイエンスカフェについて簡単にまとめておきましょう。

京都科学カフェ
生涯学習ネットワーク STUDY UNIONの主催です。この手の生涯学習イベントとしては、かなり長い歴史を持っているようです。科学カフェ自体でもNPO法人化を目指しているとのことです。

カフェdeサイエンス
科学研究に対する助成を行っている(財)武田計測先端知財団が主催しています。場所は、目黒の庭園美術館横のおしゃれなカフェです。しゃべる人が固定化してしまっているのと、事前申し込みが必要で定員も限ってしまっているのが少し残念なところです。

バイオカフェ
くらしとバイオ21というNPO法人が主催する、バイオに特化したサイエンスカフェ。食の問題や医療など、生活に密着したテーマを扱っているのが特徴でしょうか。以前このNPO主催のシンポジウムに行ったことがあるのですが、その出自ゆえか、○○は安全ですよ的な啓蒙主義的なところが気になりました。カフェでは、もっと双方向的な議論ができるとよいと思います。むしろこのカフェを通じて、市民がNPOや専門家集団を育てていくようになればよいのではないかと思います。

▼サイエンスカフェ@東京某所
南極、宇宙などについてのトークを、普通の喫茶店で行っているようです。ウェブはまだないようですが、気になる方は某SNSなどで見つけてください。

Miraikanサイエンスカフェ
今年の科学技術週間に日本科学未来館が、東京駅近くの丸ビルで開催したサイエンスカフェ。普通のカフェのイベントスペースで行ったものです。毛利さんが来たためか、入れなかった人が結構いたようです。くわしいことは僕も以前書いています。同時に、プラネタリウムのメガスターも丸ビルにやってきて、こちらも大好評でした。

Cafe ScienceStation
東京大学の学園祭・五月祭で開催した手作りのサイエンスカフェ。NPOサイエンスステーションの主催。大学院生がスピーカーとなったのが一番の特徴です。講演の時間以外にも、来場者の方々とサイエンスに関するお話ができました。次回は街中でやりたいと言っていますが、大学院生ゆえみな忙しく、なかなか実現に至りません。一緒にやりたいという学生の方、大歓迎です。あと、場所を提供してくださる方やスポンサーも募集中です。あと、スピーカーを派遣するということも考えています。

カフェシアンティフィーク東京
サイエンスカフェの研究している人などが中心となって開催しています。下北沢でやっており、大きな宣伝はしていません。地域に密着した、本来のサイエンスカフェといったところでしょうか。

▼サイエンスカフェ@茨城県
自治体主催のものも紹介しておきましょう。つくばを抱えている茨城県ならではかもしれませんが、さまざまな研究所の研究者が一般に向けて話をしているようです。
http://www.city.takahagi.ibaraki.jp/cafe.pdf など。

東北大学サイエンスカフェ
大学主催のサイエンスカフェ。大学の地域に対する知の還元という意味でも重要なことだと思います。研究成果をどう産業に活かせるかばかりが注目されていますが、「知」そのものを地域と共有するのも必要なことだと思います。むしろ小規模な大学ほど、このようなことをやっていって欲しいと思います。

サイエンスカフェ札幌
北海道大学の、科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)の開いたサイエンスカフェ。準備が早いと、僕らは驚いているところです。受講生の実践の場でもあるそうなので、2回目、3回目となるうちに、どのような素敵な空間が出来上がってゆくか楽しみです。準備の様子もブログで公開してもらえるとうれしいです。

サイエンスカフェ@酒心館
神戸大学の主催のサイエンスカフェ。複数の科学者が来て語り合うところが新しいです。「語らい」の時間があり、ドリンク付き講演会からどう脱却するか、期待しています。

▼サイエンスカフェ@東大柏キャンパス公開
これはまだどこにも紹介されていませんが、とりあえずサイエンスカフェと名をつけたので挙げておきます。毎年恒例の東大柏キャンパスの一般公開で、情報生命科学専攻がサイエンスカフェを開催します。科学者や大学院生を交流できるカフェのようです。ぜんぜん堅苦しくないものになりそうですので、楽しそうです。
ポスターはこちらから。
http://www.k.u-tokyo.ac.jp/news/opencampus2005.pdf

 また、サイエンスカフェではありませんが、ジュンク堂書店なんかでは、店内のカフェで著者を囲んだトークセッションを行っています。作家や文科系の研究者が呼ばれることが多いのですが、本を書いた科学者がゲストになることもあります。たとえば池袋本店の情報はここで見られます。

 また、サイエンスカフェを取り上げた雑誌もありますので、紹介しておきます。

『生物の科学 遺伝』 2005年1月号 (裳華房)
科学コミュニケーションの特集が組まれ、その業界で活躍されている方々が執筆しています。その中で、岡橋毅さん(現CoSTEP助手)がイギリスのCafe Scientifiqueを取り上げています。

『バイオニクス』 2005年7月号 (オーム社)
News Reviewで、東大先端研の中村征樹さんが「カフェ・シアンティフィークにようこそ」で、日本におけるサイエンスカフェの動向についてもまとめていらっしゃいます。僕らのやったサイエンスカフェも紹介してもらいました。

JSTニュース 2005年7月号 (独立行政法人 科学技術振興機構)
「カフェでサイエンス 科学者が街にやってくる」という記事で、カフェdeサイエンスとMiraikanサイエンスカフェを紹介しています。

 ほかにも、科学コミュニケーションを取り上げた記事では、サイエンスカフェが紹介されていることがよくあります。朝日新聞社が出した「AERA Science」でも、科学技術政策研究所の渡辺政隆さんが「科学と人をつなげる 科学コミュニケーションという仕事」の中でサイエンスカフェを紹介しています。

 ひとくちにサイエンスカフェといっても、扱うテーマも、対象も、ほんとうにさまざまです。でも、さまざまなところでさまざまな人たちが試行錯誤しながら、素敵なサイエンスコミュニケーションの場ができてくるのではいかなと思っています。

 最後に、僕の野望をちょこっと書いておきましょうか。今までのサイエンスカフェはどれも興味を持った人しか来にくいものでした。学園祭でやったときは、休憩のために立ち寄ってくれたなんて人もいましたが、半数以上はやはり「サイエンス」の部分に惹かれてきた人たちだったと思います。わざわざカフェでサイエンスをやるのだから、日ごろ科学にはまったく関心を持っていない人たちにも立ち寄ってもらいたいというのが僕のやりたいことなのです。
 そこでやりたいのが次のことです。一つは、ほんとうに地域密着型のカフェをやること。普段から地域の人が集まるような商店街の喫茶店でやることです。お客さんは地元の人たちです。できれば話すのも、地域に住んでいる科学者・技術者がよいと思います。科学をネタに、地域のつながりも見えるし面白いのではないかと思っています。サイエンスカフェで地域を盛り上げたいという商店街の方、あるいは喫茶店の方、ご連絡お待ちしています。
 もう一つは、「エキナカ」です。最近、おもに都市部だけでしょうけれども、駅の構内にさまざまな店ができてきています。カフェだけでなく、雑貨屋やマッサージ店まで、さまざまです。エキナカでサイエンスカフェを開いて、30分くらいの時間つぶしに寄ってもらいたいのです。サイエンスをかじってみて、ちょっと得したな、面白かったなという気分になってもらいたいのです。サイエンスカフェで駅を盛り上げたいという駅長の方、あるいはエキナカのカフェの方、ご連絡お待ちしています。
 またこれから商店街を作る、あるいは駅を作るという方も、ご連絡お待ちしています(いるかなぁ)。
 あと、札幌でできないですかね、こういうの?

 ついでに、僕のブログからサイエンスカフェ関係のものをまとめておきます。きまぐれブログなので、サイエンスカフェ事情を網羅しているわけではありませんが、ぜひ参考までに。

サイエンスカフェ in 丸ビル (05/04/24)
サイエンスカフェのシンポジウムに参加 (05/04/29)
サイエンスカフェ考 (05/05/08)
日本科学技術ジャーナリスト会議でサイエンスカフェ (05/05/14)
宣伝 (05/05/24)
茨城県がサイエンスカフェ開催 (05/06/11)
札幌でもサイエンスカフェ (05/10/07)

ついでに、僕のプライベートな日記部分から。ふざけすぎた文章もありますが、同一人物です。

サイエンスカフェ練習会(16日) (05/05/17)
サイエンスカフェどたばた日記(22日) (05/04/25)

(#1)今年の4月くらいにGoogleさんで、「サイエンスカフェ」と検索すると、このブログがかなり2~3番目とかかなり上位に出てきてびっくりしたことがある。サイエンスカフェの記事の閲覧数が、ぐんと上がってきたことからも、関心の高まりがうかがえた。と同時に、いわば自分のブログから情報が広がっていくことをはじめて経験し、僕にとってはブログを通じたコミュニケーションについて考えさせられたきっかけでもある。


科学技術インタープリター養成コース始動:東京大学 [科学コミュニケーション]

 科学コミュニケーター養成関係の記事を立て続けに書いているが、東京大学でも科学技術インタープリター養成コースがついに動き出した。

 僕もその第一期生として受講できることになったので、今日はそのガイダンスに行ってきた。実験を大急ぎで二時過ぎに切り上げ、駒場キャンパスへと向かう。1時間弱の道のりは、論文を読もうと思っていたが、誘惑に負けて読みかけの「デカルトの密室」。駒場についてまず事務で養成コースの手続きを済ます。ついで、駒場の教養教育開発機構の特任助教授の林衛さんのところへ(#1)。

 そしてガイダンスに向かった。受講生は結局14人。ほぼ3倍の倍率だったという。ガイダンスでは、黒田玲子先生が科学技術インタープリターへの思いを語り、授業や講師の紹介があった。その後、授業で使う部屋へ案内された。受講生、講師ともども、「狭い」と感想をもらした。14人が入ったらそれだけでかなり窮屈だ。それでもこの狭い部屋から何が生まれるか楽しみだ。

 そのあとは料理を囲んでの懇親会。東大関係者や、有本建男さんなど文科省関係者もいらっしゃって挨拶をなさっていた。講師にはNHKの方もいるし、サイエンスZEROに出ている佐倉統先生もいるので、北大より勝っているぞっとも思ったのだが、眞鍋かをりさん本人は来ないし、ビデオメッセージもなかった。「理系白書」で大ブレイクした毎日新聞記者の元村さんはいらっしゃっていたが、何の紹介もなかった(#2)。その辺が東大なのだろうか。
 懇親会は和やかにすすみ、講師の先生方ともたくさんお話ができた。さまざまなバックグラウンドを持った講師陣がいるのも、このコースの特色であり、楽しみなところだ。こう科学コミュニケーション業界に首を突っ込んでいると、講師の方々に結構知った方がいらっしゃって、おやっこんなところで再会ですねなんていうこともあった。一番嬉しかったのは、小説家の瀬名秀明さんが、一度だけお会いしたことがあるだけなのに、僕のことを覚えていてくださったことだ。「デカルトの密室」にサインしてもらえばよかったかも。

 そしてなにより受講生もなかなか面白い人が揃っている。14人のうち10人はいわゆる理系。さまざまな研究分野の人がいる。少数精鋭だけあって、みんな熱意があふれている。用意されたプログラムをはみでたこともできそうだ。非常に楽しみだ。

 そういえば、今日は黒田先生の誕生日らしい。というわけで、みんなで”ハッピーバースデー♪”。

 終わったのは20時過ぎ。まだ早いなあと思って、本郷の研究室に戻ってきてしまうのが、理系の悲しい性でしょうか。でもお酒飲んじゃったし、実験はおあずけかな。

 肝心の黒田先生の話について書きそびれたが、ほぼ同じ内容のことが日本化学会会誌「化学と工業」の10月号に載っている。「今求められる科学と社会の架け橋―サイエンスインタープリター 何を伝えるか、どう伝えるか」という論説で、科学技術インタープリターに対する黒田先生の思いが綴られている。これについても、思うところを書こうと思うが、明日の黒田先生の授業を受けてからにしようかと思う。

 ちょっとお酒も入っていて分かりにくい文章なので、とりあえず第一報ということで。

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札幌でもサイエンスカフェ [科学コミュニケーション]

 街中のカフェで科学者と市民とが、科学について語るサイエンスカフェ。そんなイベントが日本でもあちこちで開かれるようになった。
 札幌でもついにサイエンスカフェが開かれるという。しかも月に一回、定期的な開催だ。場所は紀伊國屋書店札幌本店(札幌駅西側)1階 インナーガーデン。初回は10月8日(明日)。天文分野では有名な国立天文台の渡部潤一氏がトークをする。また「天文学とプラネタリウム」という、天文トイレットペーパーで一躍有名になった天文普及団体も加わるという。その後も、「雪の有効利用」など地域に密着したテーマでも開催が決まっている。
 主催は、北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニットだ。もちろん受講生の実習の場ともなるという。
 「科学コミュニケーターの養成カリキュラム」でも書いたが、「わざわざ科学コミュニケーション講座を銘打って人材を養成するのだから、今までにない科学コミュニケーションの場を創造できる人を育てるべき」だと思う。ただ科学について分かりやすい文章が書けます、うまいプレゼンテーションができます、というだけではもったいない。その意味で、このサイエンスカフェを授業の一環としている「科学技術コミュニケーション・スキル II (場の創出と実演)」という授業は魅力的だ。
 札幌が丸の内線で30分くらいで行けたなら、僕もどんどん参加したいところだ。なので、北大の受講生の皆さん(もちろん講師の方々も)、ブログで情報を教えてくださいね。

 僕もまたサイエンスカフェ開催しようかな。・・・その前に、サイエンスカフェのシンポジウムのテープおこしをチェックしなければ・・・。締め切りすぎちゃったし、ブログかいてる場合じゃないですね。すみません。


「科学コミュニケーション論」に思うこと [科学コミュニケーション]

 今週水曜日から、東大物理学専攻で科学コミュニケーション論の授業が始まった。「科学コミュニケーションの講義がはじまる:東大物理学専攻」で書いたら、北大科学技術コミュニケーター養成ユニットの、stochinai さんのブログ「5号館のつぶやき」でさっそく紹介していただいた。
 stochinai さんは北大と東大の差が感じられると書いてられたが、実は講師の高柳雄一さんを以前から知っていたこともあり、講義を持つということもうかがっていたので、遠慮があったというか、無味乾燥な文章になってしまったのだ。そこで改めて少し思ったことを書こうと思う。
 まず、今回の理学系研究科で始まった「科学コミュニケーション論」の一番の特徴は、科学研究者を目指す人を対象にしていることだ。いわゆる科学コミュニケーターやインタープリターの養成を目的としているわけではない。科学研究者となった暁に、どのような科学コミュニケーションのスキルや考え方が必要かを議論し、そして身につける授業である。これが、あちこちで走り始めた科学コミュニケーターの養成を目的としたコースやプログラムと大きく違う点だ。ある意味、今後の大学院教育・研究者養成のあり方を変えるパイロット的な授業でもあるともいえるだろう(たとえば大学院教育イニシアチブ等でも、科学コミュニケーションは重要なキーワードのはずだ)。
 さて講義の内容だが、誤解を恐れずに一言で書いてしまうと、初回では主に科学と社会とのコミュニケーションギャップについての話をしていた。高柳さんは自身の経験から、伝えたいこと(=シグナル)が相手にとって必要のないこと(=ノイズ)になってしまうことがあると語り、木幡さんはそれを”世界モデル”の違いと表現していた。具体例としてアメリカのSSC計画や、ISS(国際宇宙ステーション)計画について話す予定だったが、詳しい説明をしているうちに時間切れとなった。
 かなり抽象的な話で始まったのだが、はたして受講生にその思いが伝わったかは疑問である。実際に科学ジャーナリズムや科学コミュニケーションの現場で活動されている方には、共感できる話だとは思う。また科学研究の説明責任を問われている研究者も、このギャップを実感しているであろう。しかし、学生はどうか。問題意識を持った学生が受講しているから伝わったかもしれない。しかし、このコミュニケーションギャップを切迫した自分の問題として感じることは、僕も含めてなかなかないのである。今後、初回の問題提起を絵に描いた餅にしないような授業を、展開していって欲しいと思う。
 そのためにはまずなにより、コミュニケーションギャップを体験することが第一だと僕は思う。たとえば、いきなり一般の人の前で――たとえば生協食堂のおばちゃんとか、金曜夜に飲み屋に集まったサラリーマンとか、文学部の学生とか、本郷三丁目交番のお巡りさんとか――自分の研究について語ってみるのだ。その場の反応を見られるという意味で、面と向かって話してみるのがよいと思うが、一般向けの科学記事を書かせていろんな人に読んでもらうのもいい(もちろん一行読んだだけで、残りは読まなかったというのもありだ)。そうすると、使う用語から、論理から、考え方から、話の前提から、すべてにわたるギャップに気づくと思う。この科学と社会に横たわる溝を、自分の目で、耳で、体で感じて、そしてあらためて科学コミュニケーションについて考える。学生にとっても目前の問題意識ができるわけだし、高柳さんの言いたいことも分かるのではないだろうか。座学にも、実習にも、重みが出てくるはずだ。
 大抵の場合(特に理学系の場合)、研究者として独立してから、あるいは研究グループを率いるようになってから、アウトリーチや社会へのフィードバックの必要性を実感し、そしてそれが容易ではないことを発見するのだと思う。中には、市民のリテラシーの低さを一方的に嘆いたり、妙に啓蒙主義的になったりする人もいるだろう。やはり学生のうちに社会とのコミュニケーションの(擬似)体験をしておけば、科学者としてのコミュニケーションの仕方を謙虚に探っていこうと思えるのではないだろうか。
 授業の感想のつもりが持論を長々と書いてしまったが、”科学研究者を目指す人”を対象とするなら、まず一回どんな形でも良いから、コミュニケーションギャップを体験するのがいいと思う。今度開講される授業では、ぜひともこういうことをやってほしい。
 でもでも、全体としては学生に意見を求めたりして、双方向的な楽しい授業になるのかなと期待している。あとはそれに学生がどう応えるかだ。活発な意見が出なければ、しぼんでしまう。さて、どうなるか。
 
 高柳さんにはいろいろ提案のメールをしようと思っているのだが、・・・・うう、名刺が見当たらないぞ。また授業に顔を出すかな。でも高柳さんに「実験があるしあまり顔を出せないんですよ」と言ったら、「君は早く研究室に戻れ」なんて言われるし。


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