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インタープリター修了発表会 [科学技術インタープリター養成プログラム]

 昨日は、科学技術インタープリター養成プログラムの修了発表会だった。プログラムでは修了に際して、”修了研究”をすることになっている。副専攻であるということもあり、”研究”に対してどのレベルまでを要求するかということも結局分からないままだったが、作品づくりからSTS的な研究までさまざまなものが生まれたことは非常に良かったと思っている。
 僕は当初はきちんとした研究や調査をしてみたかったのだが、時間的なこともありそこまでは至らなかった。そこで、今までしてきたサイエンスカフェなどのサイエンスコミュニケーション活動を振り返り、学生や若手の活動についての考察を述べた。サイエンスアゴラでの活動報告会についても紹介した。”研究”と呼べるようなものにはなっておらず心残りな点もあるが、修了研究かどうかには関わらず、どこかできちんとまとめてみたいとは思っている。
 全体を通しての感想だが、もっと議論をする時間が欲しかったと思う。表面上の成果としては、修了研究をおこなって発表会を行えば十分なのかもしれない。しかし教員、学生を含めてこれだけ多様な人が顔をつきあわせているのだから、”研究”に対してもっと有意義な議論ができたはずだ。せっかくの集まりを活かしきれていないのが、非常にもったいなく感じられた。1年目の教訓を十分にいかして、次第によいものにしていって欲しい。

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[STITP]自分をどう出すのか、 [科学技術インタープリター養成プログラム]

 瀬名秀明さんの二回目の講義があった。今回は、前回出ていた課題について、瀬名さんと岩波「科学」編集部の田中さんに講評していただいた。日大経済学部の中嶋康裕さんにも、ビデオレターでコメントをいただいた。
 課題の内容は、「私の注目する科学技術インタープリター」というテーマでのエッセイを書くこと。3人以上を紹介するという条件で、分量は400字×8枚である。

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[STITP]伝えることと委ねること [科学技術インタープリター養成プログラム]

 10月11日に、作家の瀬名秀明さんによる授業があった。その「科学技術ライティング実習I」では、講義の内容と感想をまとめてblogに書くことが課題となっている。受講生のblogは瀬名さんのblogにトラックバックされているので、全部を読めば全体像が分かるはずだ。僕も受講生の一人なので、半分は課題として、そして半分は普段のblogの記事と同様に、思ったところを書いていこうと思う。

 瀬名さんは、ご存知の通り「パラサイト・イヴ」など、サイエンスを題材にしたホラーやミステリーで知られている小説家である。また同時に、ノンフィクションのサイエンスライターとしても、数々の本を出している。今回の授業では瀬名さんに加え、小説家の川端裕人さんと科学ジャーナリストの森健さんをゲストに迎えて、それぞれの方々が書くということについて話をしてくださった。
 大きな問いは「なぜ書くか」ということ。瀬名さんは今までの作品を通して、なぜ書いたか、そしてどのようにしてその作品が生まれたかについて話していた。さらに、科学と物語の関係についての問いかけがあった。川端さんも、科学を取り入れた小説を書いていると同時に、ノンフィクションでも活躍されている。川端さんの言葉にあったが、お二人とも「小説とノンフィクションの地続き感」を十分に作品に活かしておられるということを強く感じた。科学的なテーマを扱うにも、両方の媒体をうまく使い分けている。
 森さんはジャーナリストの立場で、取材や執筆の取り組み方について語ってくださった。その中で、疑問の提示はするが、回答は提示していないということが印象に残った。その話題に着目した時点でジャーナリストの意思が介在しているのは当然であるが、直接的な答えは(たとえ自分で持っていたとしても)明示していないようだ。回答を考えるのは読者に委ねられているのだ。
 さて、この三人の話を聞いて強く感じたのは、書くという行為には伝えることと同時に、読者にゆだねている部分もあるということである。僕はあまり詳しくないが、文学作品においては、テクストを読むという行為によって初めて作品が完成するという考えがある。読み取り方が多様であることを許容しているというわけだ。
 一方で、科学となるとそれは許されていない。ことに科学者や専門家は、自分たちの持っている知識や考えを、そっくりそのまま相手に理解してもらわないと気がすまない。しかしながら、まるごと同じように理解させるというのは難しいことである。そこで、やさしく伝えるとか、分かりやすく伝えるとかいう、科学技術インタープリテーションの必要性が説かれるのである。
 だが、「伝えること」一辺倒ではならないだろう。受け手が受け取ってくれなければ元も子もないのだ。また、書き手の手を離れた時点で、読み手の受け取り方までコントロールすることはできないという制約もある。そこで、どこまでを”正しく”伝え、どこから読み手に委ねるのかを意識しておくことが重要なのではないかと思う。
 書くということは、伝えることと委ねることとの狭間を行き来している行為なのかもしれない。文学や現代思想では、当たり前の考え方なのかもしれないが、科学を書くときに新たに問いかけるべき問題だろう。
 この文章も、どこまで僕が伝えていることで、どこから読者に委ねていることなのか、問い続けている。


科学と社会の橋渡し役を養成:東大駒場で養成コース説明会 [科学技術インタープリター養成プログラム]

【速報】科学と社会の橋渡し役を養成:東大駒場で養成コース説明会

 科学と社会との橋渡し役を担う「科学技術インタープリター」養成コースが、東京大学に設置されるのに伴い、東大駒場キャンパスで17日、説明会が開催された。養成コースは、文部科学省の科学技術振興調整費の予算を受けて設置されるもの。代表の松井孝典・東大新領域創成科学科教授らによるコースの説明のあと、特任教授を務めるジャーナリストの立花隆氏の講演が行われた。

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講師陣が明らかに:科学技術インタープリター養成@東大 [科学技術インタープリター養成プログラム]

 科学と社会の橋渡し役として期待されている科学コミュニケーター。今年あるいは来年から、あわせて3つの大学で、科学コミュニケーターの養成が始まる。このたび、東京大学の「科学技術インタープリター養成プログラム」(代表:松井孝典・新領域創成科学科教授)の講師陣が明らかになった。

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科学コミュニケーターの養成カリキュラム [科学技術インタープリター養成プログラム]

「科学コミュニケーター養成、本格始動か」で、国内の3大学で科学技術コミュニケーターの養成が本格的に始まることを紹介した。そこで、「(科学コミュニケーションの)体系だった教育カリキュラムは存在しない。どんな人を講師に迎えるのか、あるいは座学なのか実践重視なのか、研究活動も行うのか、中身を一から練る必要があるだろう。」と書いたが、北海道大学の「科学技術コミュニケーター養成ユニット」では、カリキュラムやスタッフがすでに公開されている。カリキュラムとしては、講義・実践ともに、科学コミュニケーターの育成を主眼としたもので、さらに教科書作りも進めていきたいらしい。さらに土日、夜間に開講するなど、社会人やダブルメジャーとしての受講も可能なようだ。
 東京大学もwebでは詳細は分からなかったものの、朝日新聞の記事などの情報を総合すると、評論家の立花隆氏や作家の瀬名秀明氏が講師として加わるもよう。現役のジャーナリスト、ライターから直接指導を受けられるようだ。
 たびたび書いてもいるが、このように科学コミュニケーターを養成しても彼らの就職先がじゅうぶんにあるとは言い難い。「科学コミュニケーター養成、本格始動か」では次のように指摘した。

(追記2) 以前書いたことがあるが、となると養成した科学コミュニケーターの行き先が気になる。専門職として養成すると、就職先を狭めることにもなりかねないからだ。さらに、理系博士号取得者ともなれば年齢的にも経済的にも大変になってくる。マスメディア、一般企業ともに、専門職として科学コミュニケーションを学んだ人を雇っていくように、働きかけることも必要ではないだろうか。


 そこでは言葉足らずだったので補足しておきたい。たとえば、科学コミュニケーションを学んだ人が活躍できる職業としては、科学記者、科学ライター、科学系編集者、科学館インタープリターなどがあるだろう。
 しかしながら、新聞、出版などのメディアでは、OJTで仕事を学んでいくのが普通のようだ。つまり、若いうちに就職して、仕事をしながら取材・編集の基礎を学び、一通りの仕事ができるようになってから希望の科学部など科学系の部署に移るという形式である。そのため、科学コミュニケーションの大学院に通ったひとは年齢を積み重ねたぶん不利になる。理系博士号取得者であれば、なおさらだ。しかし一方でこのような人材が求められているのは間違いない。なので、従来型のメディア企業に対しては、科学コミュニケーションを学んだ人を専門職として採用するように働きかけるべきであろう。科学ライターだってそうだ。いきなりフリーで食べていけるはずもないだろうし、行き先を考えなくてはならない。
 むしろ、わざわざ科学コミュニケーション講座を銘打って人材を養成するのだから、今までにない科学コミュニケーションの場を創造できる人を育てるべきではないだろうか。既存の限られた就職先、科学コミュニケーション業界に縛られる必要なんかないはずだ。ウェブを利用した新しい科学コミュニケーションの形を作り出してもいいし、サイエンスカフェのような科学者と市民とをつなぐ場を構築していくのもいい。科学教育プログラムの開発、サイエンスミュージアムの設計、企業メセナとしての科学コミュニケーションの企画、広告とのタイアップ、サイエンスアート・・・・科学コミュニケーターの活躍場所はいろいろあるはずだ。これらの場を一から作り上げ、さらにいえばビジネスモデルを確立し、科学コミュニケーションのマーケットを広げるような人が必要だろう。ライティングスキル、プレゼンテーションスキルはもちろん必須だが、ミュージアムマネージメント、サイエンスメディア論、サイエンスアート、教育工学、NPOと市民参加など、広く学ぶ必要がある。(もちろん科学技術政策、科学技術社会論、科学論、科学倫理学なども。)
 そうでないと、ただでさえ限られている科学コミュニケーション業界に人があふれるだけで、科学コミュニケーション自体が広がっていかない気がするのだ。さらにいえば、科学研究を噛み砕いて分かりやすく伝えるだけの受注産業にしかなれないだろう。
 今のところ科学コミュニケーションに熱心な(特に若手の)人々は、アクティブだしアイディアもいろいろ持っているし、そんな心配は要らないかもしれない。だが、5年後、10年後のことを考えたら、科学コミュニケーションそのものの裾野を広げられる人を養成していくべきだろう。

#そもそも、科学コミュニケーション業界をまだ軽視しているからではないかと思う。ひどいものになると、余った博士号取得者の行き先として安易に科学コミュニケーターを挙げてたりもする。そりゃないだろうと思うのは、僕だけだろうか。

(追記)
 何かを書くときは、じゅうぶん調べてからというのは大原則だが、このblogは思い付きで書いていることが多いので、そこまで調べずに書いていることも多い。ああだこうだ批判したり提案したりすることもあるが、そこは許してください。
 さて、本題の科学コミュニケーター養成だが、早稲田大学もプレスリリースがあった。ここは本格的な”修士課程”のコースのようだ。北大は”大学院”ではないようですね。残る東大は、どこにも何も見当たらないのだが・・・。


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科学コミュニケーター養成、本格始動か [科学技術インタープリター養成プログラム]

 科学と社会をつなぐ人材として、科学コミュニケーターが注目されつつある。科学技術白書をはじめとする政府報告書だけでなく、大学や民間レベルでも関心が高まっているようだ。そこへ来て、ついに科学コミュニケーター養成の大学院や専門のコースが設置される動きが出てきた。文部科学省の科学技術振興調整費に3件が採択され、それぞれ年間最大1億円で最長5年間の予算がついた。
 設置されるのは、東京大学の「科学技術インタープリター養成プログラム」、北海道大学の「科学技術コミュニケーター養成ユニット」、早稲田大学の「科学技術ジャーナリスト養成プログラム」。その名のとおり、科学コミュニケーターや科学ジャーナリストを養成する専門職大学院といってよいかもしれない。
 今まで日本では、本格的に科学コミュニケーションを学べる大学院はほとんどなかったといっていい(→追記4)。京都大学の生命科学研究科生命文化学講座を除けば、科学史・科学哲学や、科学技術社会論(STS)、科学社会学の分野で研究しているという印象だ。職業としての科学コミュニケーターを養成するところは見当たらない。
 少し毛色の違ったものになっているようだが、おなじく振興調整費ではすでに東大先端科学研究センターが、「安全・安心な社会を実現する科学技術人材養成」プロジェクトでジャーナリストコースを開いている。大学・大学院という形でなければ、日本科学技術ジャーナリスト会議が開いている科学ジャーナリスト塾や、NPOサイエンスコミュニケーションサイエンスライティング講座がある。だがいずれも休日や夜間を利用したプログラムであり、試行錯誤を続けているようだ。
 本格的な科学コミュニケーター養成機関の設置は、今回が初めてといっていいだろう。科学ジャーナリストや科学コミュニケーターは、いままでOJT(on-the-job training)で養成されてきた。そのため、体系だった教育カリキュラムは存在しない。どんな人を講師に迎えるのか、あるいは座学なのか実践重視なのか、研究活動も行うのか、中身を一から練る必要があるだろう。
 科学コミュニケーション自体が、まだまだ試行錯誤の大きい分野だ。せっかく大学でやるのだから、一方向的な講義・演習にとどまらず、先陣を切って科学コミュニケーションの試行錯誤をし、実践と評価を繰り返し、そして研究もしていってほしい。

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