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東大で「科学コミュニケーション」の授業 [科学と社会]

東京大学で「科学コミュニケーション」の授業が開講されることが明らかになった。講義は、大学院理学系研究科物理学専攻の「21世紀COE特別講義VI 」。「科学コミュニケーション入門―理論と実践―」と題して、科学記事の執筆やプレゼンテーションの演習も交えるという。

21世紀COE特別講義VI 603-1406 大学院授業 相原博昭
「科学コミュニケーション入門ー理論と実践ー」科学の専門知識を有する人間が,文化としての科学の役割を認識すると同時に,科学の内容を科学を専門としない人達に伝えることの意義を理解する.また,演習によって,科学の内容を非専門家に伝える際の困難を体験し,プレゼンテーションや科学記事を書く技術の向上をはかる.なお,この講義は,科学コミュニケーションを職業としてきた講師を招いて行われる.物理学専攻としては初めての試みである. (物理学専攻講義案内より)

 近年、科学コミュニケーションの重要性が注目されてきた。科学技術・学術審議会人材委員会でも、昨年7月の第三次提言では「科学技術と社会という視点至った人材養成」を目標に掲げ、「科学技術コミュニケーション人材の養成・確保(専門職としての科学技術コミュニケーターの養成)」も具体的施策例に挙げている。博士の新たなキャリアパスとしても期待されている分野である。

 しかし、科学コミュニケーターを大学として養成しようという動きはまだまだ鈍い。教える人がいない、就職先が少ない・・・理由はいろいろあるが、東京大学のこの取り組みには期待したい。

 なにより理学系研究科でこのような講義を開講するというのが興味深い。

 実は、こんなことがあった。2003年11月に開催された東大理学部講演会「基礎科学の面白さをどう伝えるか」の一コマ。会場からの質疑のときに、理学系研究科出身の科学編集者Hさんが、岡村定矩理学系研究科長(当時)に対し、「理学系研究科でサイエンスライターや科学コミュニケーターを養成する気はあるのか」と質問していた。岡村研究科長の答えは、「真剣に検討する」だった。岡村先生は、アウトリーチにも熱心のようだし、こっそり日本科学技術ジャーナリスト会議の会員だし、どう検討するのか注目はしていたのだ。
 東大理学部は広報誌に研究室探訪というコーナーを設け、博士課程の学生に取材・執筆をさせている。早いうちからアウトリーチへの関心やスキルを高めようという試みだ。

 これに関連して、もう一つ。科学技術政策研究所のDISCUSSION PAPER No.39 「科学技術コミュニケーション拡大への取り組みについて」(2005 年 2 月)に、科学コミュニケーター養成について書かれてる。この中で、東大理学部広報室に聞き取り調査を行っている。その聞き取り調査メモの中にこんなのがあった。

(1) 広報体制全般、情報発信について
・大学院生による研究室訪問リポートを行い、ウェブで発信している。しかし、科学コミュニケーション (SC) 教育を行っていないので、学生ごとの能力差は歴然。

(2) 人材養成
・大学院生への科学コミュニケーション (SC) 教育には懐疑的な雰囲気がある。
 * まず重要なのは専門知識であり、SCは余力のある人が身につければよいという意見が根強い。
・最近の大学院生は、研究テーマでも、社会の役に立ちたいという意識が高い。研究を通じた SC への関心は高い。大学院でのコミュニケーションスキル教育への要望は高まっているが、反対意見もある。
・SC をどうやって教えるか――有能な科学ジャーナリストでも、教えるスキルを持っているとは限らない。
・SC 教育を実施するとしたら、特認教授でならばすぐにでも可能。ただし適任者がいない。
(以上、適当に抜粋)

 講義の内容がどうなるのかは分からない。ただのライティング講座になってしまってはつまらないし、アウトリーチのできる研究者養成にとどまってしまってももったいない。
 「科学コミュニケーション」の授業ができるのか。今のところは期待したい。
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