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寒椿 ぽとりぽとりと冬が逝く  [日記・雑感]

 家のベランダから見えるところにちょうど、寒椿が咲いている。洗濯物を干していると、上向きについた赤い花弁がよく見える。ところが今朝、どうも違和感を感じると思ってよく見てみたら、いつものところにあった花がない。確か先週はまだあったはずだから、ここ数日のあいだに落ちてしまったようだ。見下ろしてみると、土の上にいくつもの赤い花が散っていた。
 ベランダから身を乗り出していたら、ふと寺田寅彦のことを思い出した。どの随筆で読んだのかは忘れたが、彼は椿の落下について考察を行っている。椿の花が落ちるときは、はじめは下向きであっても途中で回転し、仰向けになって着地するのだという。
 僕の見ていた寒椿も、空を向いて落ちたのだろうか。春のような陽気と引き替えに、落ちてゆく寒椿。きっとそれは冬が去ってゆくしるしなのかもしれない。そこで一句。

 寒椿 ぽとりぽとりと冬が逝く (けけみ)


(追記) 
 椿が落ちるというので思い出すのは、「笠へぽつとり椿だつた」。種田山頭火の句です。俳句の面白いところは風景や出来事の切り取り方だと思うのですが、山頭火のそれには圧倒されるものがあります。先ほど僕の拙い句を書きましたが、頭のどこかに山頭火の句があったのかもしれません。桜のように美しく散るのではなく、「ぽつとり」といつのまにか落ちてゆく。そんな朴訥とした姿に、どこか共感を覚えます。


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